■Index■

▼第1部 「人にやさしい経済」への胎動
第1回 21世紀の成長産業
第2回 市民風車
第3回 車椅子移送サービス
第4回 観光を通じた地域活性化
第5回 環境規格
第6回 エコマネー

▼第2部 「儲けない会社」の世界
第7回 4つの条件
第8回 形式より《想い》
第9回 公益のパートナー
第10回 非営利と収益(上)
第11回 非営利と収益(下)
第12回 青森県の現状

▼第3部 「働きがい」の復権
第13回 支える人びと
第14回 事務局長の仕事
第15回 保護から貢献へ
第16回 エゴを生かす仕掛け
第17回 育て市民起業家
第18回 緊急雇用対策

▼第4部 自立のための戦略
第19回 さまざまな資金源 (上)
第20回 さまざまな資金源 (下)
第21回 会費中心の運営
第22回 社会貢献カード
第23回 助成金を使いこなす
第24回 収益事業の設計
第25回 行政との協働
第26回 市民出資の可能性

▼第5部 社会の実験室として
第27回 設立時の検討項目
第28回 法人の形態を選ぶ
第29回 認証申請と法人化
第30回 「結い」の先進性
第31回 企業との共存
第32回 情報公開と情報戦略

 
■第1部 「人にやさしい経済」への胎動■

第2回 市民風車

 第1回では、NPOを産業のひとつと位置づけ、その規模や可能性について考えてみました。今回は、地域経済に密接に係わっている事業型NPOの例として、NPO法人「グリーンエネルギー青森」を紹介します。

市民の手で発電所をつくる
 グリーンエネルギー青森(GEA)は、鯵ケ沢町で最大出力1,500KWの風力発電所(愛称「市民風車わんず」)を建設し、2月28日営業運転を開始しました。年間370万KW時、約1,100世帯分の発電を行う計画です。


写真:岩木山をバックに立つ市民風車わんず。タワー部の高さは65m、羽根まで入れると100mある

 「市民風車」という名称は、趣旨に賛同する市民から一口10万円の出資金を集め、建設資金に充てることから名付けました。目標額は1億3,000万円、既に7800万円(3月末現在)の出資申込が来ています。
 発電した電力は東北電力に買い取ってもらい、利益分を出資者に分配します。また、出資者の名前を本体に刻み、「私の風車」という実感を持ってもらえるようにします。

循環型社会実現のために風力発電を
 青森県には非常に多くの風力発電所がありますが、ほとんどが商社など営利企業によるものです。NPOであるGEAが風力発電に取り組むのは、「循環型社会の実現」と「地域の自立」を、団体の社会的使命(ミッション)としているからです。
 風力をはじめとした自然エネルギーの普及は、環境にやさしい「循環型社会」の条件である、とGEAは考えています。原子力エネルギーには放射性廃棄物、火力には地球温暖化の問題があるからです。一方で自然エネルギーにも、発電にかかるコストが高いという課題があります。
 しかし、「多少高くても、クリーンで再生可能なエネルギーを選びたい」と考える人も多数存在します。「市民風車わんず」はそうした市民の声を集め、一人ひとりが将来のエネルギーのありかたを選択できる仕組みなのです。
地域の資源は地域のために
 また、民間企業の行う発電事業の場合、地元に落ちる利益はわずかです。「地域の自立」という観点から見ると、もともと地域の資源である風は、地元経済にもっと生かされるべきです。
 そこで「市民風車わんず」は、地元ほど出資金に対する利回りが高いよう計画されています。利益をより多く地元に還元するためです。また、売電収入を活用して、まちづくり基金「鯵ヶ沢マッチングファンド」をつくることも提案しています。
 このように、NPOが行う経済活動は、それぞれの団体がもつ「社会的使命」と、事業としての採算性・効率性の両方を追求する点が特徴であると言えます。

(三上 亨)


「市民風車わんず」への出資申し込み (6/30更新)
 市民出資の「鯵ヶ沢枠」「青森県枠」は募集を終了しました。最終的に1200口 (1億2000万円) の申し込みがありました。「全国枠」の募集は、9月16日まで行われています。詳細は、自然エネルギー市民ファンド まで。
お申込・お問合先:グリーンエネルギー青森
〒030-0862 青森市古川1-16-7のむらビル2階 TEL & FAX 017-723-2008
Email: mikami@ge-aomori.or.jp Web: http://www.ge-aomori.or.jp

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