十和田NPO子どもセンター・ハピたの

 十和田市で「地域で子どもを育てたい」という願いを抱いて、さまざまな取り組みを行なっています。代表の中沢洋子さんにお話を伺いました。

 

 

 

 

 

-NPO法人十和田NPO子どもセンター・ハピたのはどういった活動をされているのでしょうか。-

NPO法人として立ち上げてから16年が経つんですけど、「子ども達を地域で育てたい」という思いの仲間がNPO法人を立ち上げました。前身は「十和田おやこ劇場」という任意団体だったんですが、1000人くらいいた会員がどんどん減ってきて70人くらいまで少なくなり、毎年存続の危機でした。続けていくためにはどうすればいいか、というワークショップを何回もやり、その結果、やっぱり地域で子どもを育てたい、法人化して責任を持ってやっていこう、ということになりました。その年、十和田市で初めて指定管理者制度が導入され、「私達も子どもから学びたい。」という思いで、翌年学童保育の指定管理者として申請し受託しました。その頃受け持った子ども達はもう社会人になっています。また、おやこ劇場から「読み聞かせ」の事業を継続しています。そして収益を確保するということが大事なので、コミュニティカフェを始めてからは10年になります。あとは「あそび」を大事にしているので、あそびを事業にしています。事業としては学童保育、読み聞かせ、カフェ、あそびの4つになります。

 

 

 

 

 

-先ほどカフェでランチをいただいたのですが、本当に美味しいですよね。NPOがやっているカフェとかコミュニティカフェというところではなくて、当たり前に十和田の美味しいものが食べられるお店だなと思います。NPOでありながら、飲食店を経営するというご苦労はありますよね。-

あります。いっぱいあります。最初カフェをやる予定は無かったんですね。NPO法人を立ち上げた当時、学童保育には70人の子どもがいたのですが、70人の家庭環境があり、その頃からDVやいじめなどいろんなことがありました。子ども達の課題を解決していくためには、学童保育だけではなく、ちゃんと子どもを発信していく拠点・場所があったほうがいいな、ということに気付き始めたのです。学童保育での経験があったから、結果カフェという手段で子どもを発信していこうということになりました。カフェは、地域で子どもを育てていくための手段なのです。

 

-「十和田NPO子どもセンター・ハピたの」という団体名に込められた想いをお聞かせください-

立ち上げる時のワークショップでは、名前をどうしようか、ということでいろんな候補がありました。その時、子ども達に「どんな居場所にしたい?」と尋ねると「ハッピーで楽しい場所がいい。」と言ったんです。それを縮めて「ハピたの」。だから子ども達がつけてくれたんです。

-ハピたのさんのホームページを拝見するとピンクが基調になっていて、「ハッピー、楽しい」という感じですよね。-

みなさん、イメージがサーモンピンクっぽいって言うんですよ。私達が決めたわけじゃないんです。周りが勝手に決めちゃってる(笑)だからメニューもサーモンピンク、みんなの声でそうなった、不思議ですよね。

-活動されている中で苦労したこと、楽しかったこと、嬉しかったこと様々あると思います。そういったエピソードをお聞かせいただければと思います。-

私は代表ですけれど1人でやっているわけではありません。副代表と専任理事の2人がいるんですね。2人とも学童保育の現場におりますが、仲間がいるので、やってこれたというのはあります。もちろん法人の責任者として、カフェをやっているから経営者と呼ばれるようになり、その責任はあります。

4つの事業のうち、カフェと学童保育は収益を確保するところです。これで回しています。あとはボランタリーなところ、お金をもらえない事業です。 カフェを始めるにあたり、やったことがないところに入っていく、人を雇用する、というところでの大変さはありました。雇用するということは責任と覚悟が必要です。本来の仕事であるメニュー開発とか、カフェでのイベントを企画するっていうのは大変ですけど、それはこれまで通りやっていけばいいんです。それ以外のこと、人を雇用するためには責任を持って預かり、育てていく、そこが大変。

 

 

 

 

 

-昨今のコロナ禍、直接打撃を受ける業種ですが、大変な中、テイクアウトなどで頑張っていらっしゃるな、と拝見していました。でも今日は先ほどまで満席で賑わっていましたね。-

お客さんが少し戻ってきたかな、というのはあります。おかげさまでコロナ禍でも、お弁当という元々やっていた部門があったので、それをお客様が注文してくれた、という形ですんなり移行できたのかなと思います。

-NPOが継続して活動するために、「自立」「自律」とよく言われます。やはり経済的な自立は不可欠で、どこのNPOも継続するためにどうやって収入を得ていくかということが常につきまといます。そういう意味で、ご苦労はたくさんあると思うのですが、これだけ流行っているカフェを経営しながら、でも経営者じゃなくてNPO法人の代表である中沢さんはすごいな、と思います。-

カフェでこうしてエプロンしていますけど、カフェにいても「私は子ども達を育てているんだ、今。」と常に思っています。斉藤さんに注文された料理を持っていく時も、子ども達を育てているという気持ちを持って、持って行っているんです。そこはブレずに進んでいかないと本末転倒です。私の行動がイコール地域や子どものためにならなければ時間の無駄だと思います。だからその思いを伝えていくために、毎日が必死です。

-子育て支援は、子育てを終えると自分も卒業みたいになってしまいますよね。中沢さん達の活動は、自分の子育ては終わったけれど、地域の子育ては終わっていない、という感じです。その心意気が次の世代にも伝わっていけばいいですよね。-

私たちがやっていることはゴールがありません。ずっとやり続けていかなければいけません。子ども達が地域で育っていくために、団体として自立したいと思い、ボランタリーではなく収益を確保してきました。子ども達や地域の方が、ここで笑ったりお喋りしたりする様子を側から見て、「おばちゃん達が頑張っているな。いろんな人が笑っているし、商店街も明るくなったし、なんかいい感じだね。」と言われるように頑張っていき続けたいと思います。

 

 

 

 

 

-中沢さん達が団体を立ち上げてから16年、NPOや子育て支援などに関する社会の理解はずいぶん変わってきていると思います。その変わってきている良い部分はどういうところだと思いますか。-

私達はいろんな人にお世話になってNPO法人を立ち上げたんですね。だからこれは成功事例にならなければだめだと思っています。いろんなNPO法人がありますが、「どうせNPOなんでしょ。」という言われ方ではなくて、「NPOってすごいね。頑張っているんだね。」と思ってもらいたい。成功事例としてお世話になった方への恩返しをしたい。それで頑張っているところって結構あります。

-NPO法人って何ですか、と聞かれることがよくありますよね。いろんな組織形態がある中で、これまでNPO法人として活動されてきた中沢さんにとってのNPO、NPO活動とはどんなものでしょうか。-

NPOって自分達が好きなことをやるだけではなくて、地域の課題をちゃんと解決していくということに真っ直ぐ進まなければいけない、追求しなければいけないと思います。NPO法人立ち上げの際支援してもらった、NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター永沢さんからいただいたチェック項目「ちゃんと地域のためになっているか。1人で抱え込まないで運営できているか。周りに還元されているか。」などが、私の頭の中にざっくりですが常に入っています。NPO法人として地域に対し結果、成果を残していくことを追求していかなければいけないと思います。

普通の社長さん達も大変だと思いますが、私達はNPOの社会的な価値と、経済的な価値と2つのことを同時にやっていかなければならない。私は任意団体の頃からどちらかというと「ボランタリー派」で、儲けるということが下手なんですが、そこはきちんとやっていかなければいけません。

-これからもまた地域のために、そして私達も美味しいお料理をいただきたいので、頑張り続けていただきたいなと思います。-

メニューは10年間変わっていないんです。どれか外そうとしても外せないのです。でも実は調味料がちょっと変わったり、調理の仕方を変えたりというのは日々あります。メニューは変わっていないけれど頑張っているんですよ(笑)

 

-中沢さん、ありがとうございました。今日はたくさんのお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。中沢さんの思いがたくさんの方に伝わり、共に支え合える社会となりますことを願いながら、今日のインタビューを終了させていただきます。ありがとうございました。-

聞き手/構成 斉藤 雅美
写真/齋藤 純子

インタビューの様子はYutubeでもお聞きいただけます。

特定非営利活動法人十和田NPO子どもセンター・ハピたの
代表理事 中沢 洋子
〒 034-0011青森県十和田市稲生町16-43
電話: 0176-23-0853
E-mail: info@hapitano.jp