なんぶねっと

南部町で福祉セーフティネット事業、子ども活動支援事業、地域活性化事業などを行なっています。代表の四戸泰明さんにお話を伺いました。

 

 

 

 

 

-NPO法人なんぶねっとはどういった活動をされているのでしょうか。-

介護保険制度が始まって結構年数経ちますが、介護保険制度で行われているサービスだと、生活に関わるサービスが全て賄えるわけではないんです。例えば1時間で掃除とかやってくれるヘルパーさんがいたとしても、窓拭きやゴミ捨てまでやってもらえなかったとか、介護保険制度外のサービスが必要です。その依頼をどっかが受け皿になってもらいたいということで、じゃあ自分達で、そこに住んでいる人達でそういったサービスを作ってしまおう、ということで生活支援サービスを行う福祉セーフティネット事業がNPOとしての軸になります。

そのサービスの担い手は当初高齢者の方が多かったのですが、若い担い手を増やしたいという思いがありました。だったら子どものうちに地域の活動に参加する仕組みを作って、大人になった時に自然に担い手になってくれるように、将来的に支援する側に就いてもらえるようにということで、子ども活動支援事業を始めました。

そういった生活支援というニーズだけではなくて、地域をもっと面白くしようとか、楽しくしていこうということでやっているのが、なんでもありの地域活性化事業です。

これら3つの事業を地域の中で回していくためには、いろんな団体と連携・協働していかなければいけないので、連携協働を支援する市民活動支援事業も行っています。

この4つの事業でNPOをやっています。

 

 

 

 

 

-確かにヘルパーさんに来てくださっても、決められた1時間であれもやって、これもやってというのは難しいですよね。生活支援サービスというのは担い手がたくさんいなければカバーできないと思いますが、そのあたりはどうですか。人は足りていますか。-

そこなんですよ。人がいないじゃないですか。全てをNPO法人の会員だけでやろうとすると限界があります。しかし、NPO法人の会員にはならないけれど、そのサービスが必要な時に声をかけるとやってもらえる人っていうのが結構いるんですよ。「今度仕事が休みの時にお手伝いできますか?」と声をかけると「私、できますよ。」そういう臨時的な支援をできる人が結構いたので、登録制度を作って、NPO法人の年会費などで縛ることなく、いつでも支援できる時はやってもらう、辞めたい時にはいつでも辞められる、そういう人達とのつながりを増やして回している感じですね。

-四戸さん自身がこういった活動を始めようと思ったきっかけは何ですか。-

そもそもこういうことに気付いたというのは、自分が大学を卒業してからこの地に戻ってきて就職した先が社会福祉協議会だったんですね。ボランティアを担当した時に、「こういうことをやる人(ボランティアする人)が大切だな。」と思ったんです。自分は社会福祉協議会というコーディネート側だったわけですが、コーディネートする人は給料をもらってお仕事としてやるので、ある意味誰でもできるんです。だけどコーディネートする側が充実していても支援する人が多くいないと、地域の支援体制って上手くいかないなと思いまして、じゃあコーディネートは社会福祉協議会に任せて、自分は支援側に回ろうということで退職をして。まぁその頃若かったんですね、反対も押し切って(笑)

-退職しちゃったんですね。ご家族の方とかみんなに反対されませんでした?収入はどうするんだ!とか。-

それを納得させるというのが、自分はなんだかんだで上手くやったんですよね。退職した理由っていうのが、実家のりんご農家を継ぐということもありました。農業をやりながらやれる仕事ということで、NPO的な活動をしながら学校の臨時講師をやったりして収入を得ました。いくつかの仕事を色々組み合わせていくと収入はある程度得られる、それで家族を納得させました。世帯主として電気代とか税金とか払うから何も言わないで付いてきなさい、みたいな感じで今に至るわけです。

-そのいろんな仕事を組み合わせるって今の新しい働き方ですけど、ずっと前からやっていらしたんですね。-

自分が地域の中で何かやりたことをやるという時に、いろんなやりたいことを組み合わせて収入としてまとめると生活できるんだ、っていうことをある意味実践したわけですね。

 

 

 

 

 

-四戸さんのカフェでお話をさせていただいているんですけれど、とても美味しいコーヒーを淹れていただきまして、カフェのマスターの顔ですよね。農業・生産者のイメージが全く感じられないのですが、りんごを作っていらっしゃるのですよね。-

そうなんですよ。地域の人達も勘違いされるんですけど、私は本業農家なんです。この録音があるからじゃなくて日常的にこの格好(ネクタイを着用)、農作業の時はもちろん作業着です。そもそも農業を継ごうと思ったのは、父が亡くなって誰かが農業をちゃんとやらなきゃいけない、ということになり、兼業でやるという選択もあったのですけれど、やるからにはちゃんと農家としてどこまで成功できるかと、そういうチャレンジを一度したいな、というのがありました。農業をベースにして他の仕事をやりながら続けているので、どっちかというと農家よりも、他のことの方が多くなってしまっている状況、ということは農業収入の比率が・・・まずいんですけど、だんだん上がってはいるんですよ。作業着の時間が増えています。将来的には100%作業着でその辺にいるかもしれませんよね。

-農家、農繁期ってめちゃめちゃ忙しいですよね。そういう中で他のお仕事との組み合わせというのは、大変なものでしょう。-

この話は誰にも言ってない影の努力なので、言っちゃうと影の努力がオープンになってしまう(笑)普通の農家さんだと日が暮れたら帰りましょう、って感じになります。私の場合は作業が間に合わない時は、発電機でライトを照らしてりんごを収穫したり、夜中に稲刈りしたり。常識では考えられないことをしています。朝日と共に終わったーということもあります。近所の方からは「あんなに遅かったのにいつやったの!」と思われていますよね。24時間という時間をフルに使って作業をどうにかこなしている感じです。

 

 

 

 

 

-「なんぶねっと」という団体名に込められた想いをお聞かせください-

なんぶねっとの「ねっと」はネットワーク、人と人との繋がりなんですけど、地域と地域、人と地域、そういう繋がりがすごく大事だと思っています。繋がりがあるから人ってなんだかんだで孤独じゃない、一人暮らしでもネットワークによって寂しさ・孤独感っていうのが和らいだりします。そういうことを大事にしよう、この辺は「南部地方(なんぶちほう)」と言われていたので、南部の繋がりを大切にする法人として住民主体でやっていこうよ、ということで「なんぶねっと」という名称でやっています。

-事業としては4本柱になるわけですけれど、活動されている中で苦労したこと、楽しかったこと、嬉しかったこと様々あると思います。そういったエピソードをお聞かせいただければと思います。-

自分達のNPOは住民主体だからこそ、そこに住んでいる人達が手作りでようやっと形にして来ました。簡単にいかないことが結構ありましたが、いろんな人に協力してもらってようやくできるようになったんです。例えば、地域や住んでいる人のためにいいことだと思ってイベントを企画しても、ゼロから新しいことをやろうとすると、「前例が無い。」という理由で壁にぶち当たります。この地域で地域づくりをするNPOとしての団体は「初」だったので、その分壁にぶち当たってそれをクリアして今に至ります。きっと自分達の後に続いてきているNPOにとっては前例を作ってあげたので、そういう意味では苦労した分が良いことに変わったと思います。

-南部町というエリア、大きい街とは違った良さ、逆にご苦労がありますよね。今やられていることって「共助」になりますよね。狭いエリアだからこそできることもあれば、逆にいろんな意見が入ってきてやりづらいこともありますよね。そこは四戸さんの出身地である南部町でやることに意義があるんでしょうね。-

住んでいるところで、親しみのある場所のためにやるっていうことで、結構大変なことでも頑張れる力が出てくるので、そういう意味で出身地だからっていうのは大きいかもしれませんね。

-四戸さんのNPOの活動とは別に、美味しいアップルパイを作っていらっしゃいますよね。私も以前いただいたことがありますが、とっても美味しいです。こういった収益事業とNPO活動の両立というのは、これまた大変ですよね。-

NPOでやっている事業と、私が農家でやっている事業と、NPOと農家が連携している事業が入り混じっていますから、外から見ると同一の事業に見えるんですけど、自分の頭の中では整理されているんです。アップルパイに関しては農家の6次産業化で農家の収益になるんですけど、例えばNPOでやっている屋台カフェという事業に出店してアップルパイを販売しました、という時には売上の何パーセントがNPOの収益になる、そういう仕組みの中でNPOの収益事業と回している感じですね。

 

 

 

 

 

-NPO法ができて20年、四戸さん達が団体を立ち上げてから9年、社会におけるNPOや地域の福祉に関する考え方というのはずいぶん変わってきていると思います。変わってきたな、と思うのはどういうところだと思いますか。-

私達が活動を始めた時、先駆的というか誰もやっていないことだったので注目度が高かったんですね。そういったスタートから現在に至るのですが、その間にいろんな方の活動が地域の中で増えてきたと思います。自分達があの頃新鮮だったことをもう過去として、今は私達の次の世代がどんどん後から新しいことを生み出していく、古いから、新しいからどうのこうのということではなくて、きっと過去があるから未来があるということです。今やっていることが古くなったとしても新しいことが生まれて、それがどんどん繋がっていくんだろうなと思います。次の世代が新しいことをやることで、私達がやってきたことがバトンタッチされていく、そういったリレーが地域の中でできることが重要だと思っています。私達も常に走り続けられる部分は走り続けて、後から追い抜かれないように頑張りたいなと思っています。

-立ち上げた頃、いわばパイオニア・先駆者ですよね。ずっと走り続けてきて、今になっても立ち上げた当時から変わらず困ったなぁということ、社会の認識とか、地域の住民のみなさんの協力度とか、変わって欲しいなと思うのはどんなことでしょう。-

正直なところ、NPOという言葉が20年前から広がって、地域の中で自分達が立ち上げてから10年経って、どれだけの人がNPOを認識しているかというと、知っている人は知っているけど、知らない人は知らないままなんですよね。知っている人というのもその業界の人だけだったり。それだとそこから広がらないから「あの人達何やってるんだ?」っていう風に見られるわけです。割合で言うとNPOを知っている人の方が少なくて希少な人達だということなんです。そう考えるとNPOという言葉への理解というよりも、「やっていることが素晴らしい、私達のためにこんなことやってくれているんだ。」というそっちの理解を先に広げていかなければいけない、ということを昔から変わらず感じています。NPOというものを理解してもらおうと思って勉強会を開いても限られた人しか来ないわけですよ。一般町民の人にやっている内容とNPOの理解を広げようしても、それはこの先もハードルが高いと思うので、だったらNPOを知らない人が支援を必要とした時にNPOとして関わって、その場で「あなた達NPOはこういう活動をしていたんだね。」という、そこで理解が生まれるわけです。そういった繋がりを多くすることが、重要なのかなと思っています。だから現場重視で行こうと決めた、高齢者支援サービスなどに行く時が、一番自分達の力を発揮する場所だと思って意気込んで行っています。

-NPOって何?と未だに聞かれることがよくありますし、NPOって何をやっているんだかよくわからないと言われます。その度に、こんなにすごい活動をしているのになんで伝わらないのかなと思います。その伝え方はいろんなところからアプローチしていかなければいけないと思いますし、自団体の発信も必要ですし、私達のような中間支援組織がこういう紹介プロジェクトを通して、まず知っていただく。知っていただければ頑張っているところにお手伝いはできないけれどご寄付してみようか、とか何かしら自分ができることを考えるきっかけになればいいなと思います。

いろんな組織形態がある中で、これまでNPO法人として活動されてきた四戸さんにとってのNPO、NPO活動とはどんなものでしょうか。-

私が社会福祉協議会という組織の中でボランティアとか市民活動とかNPOを支援するコーディネート側だった時に、こんなにもいい制度が日本で出来上がったんだ、というのを知りました。NPO法の中身をコーディネート側として知ると、これって重要だなと思ったわけです。地域のためにそこに住んでいる人たちが公益性の高い事業を継続的にやるためにはどういう組織化が必要かと考えると、そのまま直に、それしか(NPOしか)無いな、と思いました。自分達は、「自分達がやりたいことをやるにはNPOしかないな。」その一本だけでスタートしましたね。これからはやった側としていろんな人に知っていただいて、仲間を増やしていきたいですね。

-四戸さん、ありがとうございました。今日は四戸さんのたくさんの思いが詰まったお話をお聞かせいただきました。四戸さんの思いがたくさんの方に伝わり、共に支え合える社会となりますことを願いながら、今日のインタビューを終了させていただきます。ありがとうございました。-

聞き手/構成 斉藤 雅美
写真/齋藤 純子

インタビューの様子はYutubeでもお聞きいただけます。

特定非営利活動法人なんぶねっと
理事長 四戸 泰明
〒039-0103 青森県三戸郡南部町大字大向字中居構1-11
電話:0178-76-3585
E-mail: npo-nanbu@outlook.jp