レスパイトハウスWA

「NPO法人レスパイトハウスWA」

青森市内で放課後等デイサービス、日中一時支援事業、レスパイト事業(*)を行なっており、知的に障害のあるお子さんを対象に個別課題や自立課題を毎日行うことにより、将来地域で生活する時に少しでも役立つよう支援・指導しています。代表の石岡裕子(ひろこ)さんにお話を伺いました。

*レスパイト事業・・・障害児を在宅でケアしている家族を癒すため、一時的にケアを代替しリフレッシュを図ってもらう家族支援サービス。

 

-どういった活動をされているのでしょうか。-

放課後等デイサービスは、知的に障害のあるお子さんを放課後、長期休暇(夏休み、冬休み、春休み)にお預かりして支援する事業です。日中一時支援事業は市の委託を受け、ご家庭で急に何かあってお子さんを見られない時に子どもさんを日中一時的に預かる事業です。そしてレスパイト事業というのは無認可なのですが、どの事業にも当てはまらないお子さんも時々いらっしゃるので、そういう方のために1時間500円でお預かりしています。この3つの事業を行なっています。

放課後等デイサービスと日中一時支援事業を行なっている事業所は他にもありますが、私たちにとって本来の目的であるレスパイト事業をやっているのは多分ここだけだと思います。

             

-NPO法人を立ち上げたきっかけはなんでしょうか。-

私たちは障害のある子の親の会「手をつなぐ育成会」で理事として活動をしていました。障害のある子とその家族に向けて行事や研修などを開催していたのですが、それだけでは何か違うよね、と思い始めました。私たち自身が子育てをしている時に、ほんのちょっと手を貸してくれる場所があったらいいのにね、という思いがずっとありました。じゃあそういう事業をやりましょう、ということになり、その後「手をつなぐ育成会」から独立してNPO法人を立ち上げました。

私たちはみんなずっと主婦をしてきた、障害のある子の子育てだけしてきた人たちでした。立ち上げるにあたって何も分からないわけです。その時にあおもりNPOサポートセンターさんのことを知り、色々助けていただいたり一緒に役所にかけあっていただいたりしました。みんなに助けられてできたレスパイトハウスWAだと思っています。

-レスパイトハウスWAという団体名はどのように決められたのですか。-

当時の理事みんなで考えました。特に前理事長の山口がレスパイトという名前に思い入れがあったのです。「WA」については、和やかな意味の「和」、みんなのつながりの「輪」、そして津軽弁で自分のこと「わ」って言いますよね。その3つを兼ねて「WA」にしましょう、ということで決まりました。

-障害のあるお子さんのお母さんたちで結成されたわけですが、みなさんのお子さんは大きくなり、このレスパイト事業、支援を必要としない年齢になりました。それでも17年間今もって続けていらっしゃる、自分たちのお子さんが手を離れても、他のご家族に手を貸している、それはどうしてなのでしょう。-

後輩のお母さんたちを先輩として手助けしたいという気持ちでここまで続けてこられたのかな、と思います。私たち自身、冠婚葬祭はもちろんクラス会なんて全然行けませんでした。私の母が癌になって手術するという時に、付添いに行きたいのですけど、子どもを預かるところがありませんでした。無認可の保育所に預けたこともありましたが、その頃は障害児を預かるという専門的な知識を持つ施設が無く、子どもにとって1日目はいいのですが、2日目になると嫌がって行きたがらない。そういう姿を見ていると、専門的に養育してくれるところがあればいいのになぁ、しみじみ感じました。

この事業を始めてから、あるお母さんが笑顔でこう言われました。「ここに子どもを預けて初めてクラス会に行けました。」何年ぶりの数時間の外出、それすら今まではずっと我慢してきたそうです。そういうお話を伺うと、自分たちも励みになります。

-活動されている中でどんなことが嬉しいですか。-

養護学校の運動会や学習発表会を見に行った時に「石岡さーん」って声をかけられると嬉しいですね。また、以前ここに通っていたお子さんから街で声をかけられることがあります。背が高くなっていて声も変わって最初は誰だかわからない、自分から名乗ってくれた時、その成長を見られた時がとても嬉しいですね。

 

 

 

-これまで何人くらい卒業されているのですか。-

数えたことがないけれど恐らく300人にはなっていると思います。学校を卒業して施設に入る子もいますし、作業所に通う子、働いている子もいます。

働いている子がね、いつもそこの駐車場に自転車で来るんですよ。自分から中に入ってこられずうろうろしている。だから私たちがおいでおいでと声をかけると、お茶を飲んでお菓子を食べながらおしゃべりをして帰って行きます。そういうことも嬉しいですね。みんな社会人になってしまうと集まる機会が無いので、いつかみんなで集まることができればいいですね。

-卒業したお子さんや家族が会員になってくれて、石岡さんたちの活動を支えてくれる、寄付などの形で支援してくれる、というような輪が広がり、いつかみんなで集まることができたらいいですね。-

-NPO法ができて20年、石岡さんたちが団体を立ち上げてから17年と、社会においてNPOに関する理解はずいぶん変わってきていると思います。その変わってきている部分はどういうところだと思いますか。-

 

私たちがこの事業を始めた時、周りの人がNPOってなんだろう、と理解できない、いかがわしいような法人だというイメージがありましたが、今は浸透してきている実感があります。ただ、東日本大震災であったようなNPOによる不正行為が出て来ると、あぁ嫌だなぁ、こういう風に見られるとNPOのイメージが悪くなるなぁと腹ただしく思います。

-逆に変わっていない部分、変わって欲しいのに変わらない部分はどういうところだと思いますか。-

制度に対する国の扱いでしょうか。社会福祉法人に比べNPO法人は税制が優遇されていません。もう少しNPOに手厚く、国が推し進める形になるとやりやすいと思います。「補助金とかあるんでしょ。」とよく言われますが、そういったものは全くなくて、事業をして初めてお金を得られるわけです。レスパイト事業の1時間500円、最低賃金よりも安いでしょ。この事業については結局はマイナス収支ですけど、それで助かる人がいるのであれば、という思いです。あくまでも営利目的ではないのです。

-石岡さんの人生においてNPOは大きなウエイトを占めていると思います。これまでNPO法人として活動されてきた石岡さんにとってのNPO、NPO活動とは何でしょうか。-

起業するにあたりNPOというのはとてもやりやすい、いい制度だと思います。
NPOは私たちがこの事業を始められるきっかけになったものです。多分、NPOという形が無ければ始められなかったと思います。
「ちょっと手を貸してくれるところがあれば、いつでも駆けこめる場があったら。」自分たちも同じ思いをしてきたからこそ、その経験を生かしてこれからも後輩のお母さんたちに寄り添って行きたいと思います。

-石岡さん、ありがとうございました。今日はたくさんのお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。石岡さんの思いがたくさんの方に伝わり、共に支え合える社会となりますことを願いながら、今日のインタビューを終了させていただきます。ありがとうございました。-

聞き手/構成 斉藤 雅美
写真/小西 利治

インタビューの様子はYutubeでもお聞きいただけます。

特定非営利活動法人レスパイトハウスWA
理事長 石岡 裕子
〒030-0822 青森県青森市中央4丁目7−8
電話&FAX: 017-723-1565
E-mail: r.wa@celery.ocn.ne.jp